『国民生活センターに寄せられた賃貸住宅の敷金・保証金に関する相談件数は2006年度(07年2月15日現在)で9,700件に達する。多額の修繕費を差し引かれ、敷金・保証金がほとんど戻ってこなかったり、敷金では足りず、追加の修繕費用を請求されたりしたケースもあるという。〜中略〜
全国借地借家人組合連合会副会長の船越康亘さんは「入居時の傷などの状態を写真に撮ったうえで原状回復チェックリストにして貸主と取り交わしておくといい」とアドバイスする。自分の責任でないことが証明できれば、敷金の返還交渉のときに役に立つはずだ。』
<以上抜粋引用:日本経済新聞2007年3月10日>
国土交通省や東京都が定めた「原状回復のガイドライン」によると、通常の使用方法による消耗は、家主の負担と判断されています。
「通常使用」の範囲かどうかで、どちらが負担するのか変わってきます。上記の記事では、自分で付けた傷なのか、入居前から付いていた傷なのか証拠を撮り、大家と共有することを勧めています。元から有った傷ならば、「通常使用」の範囲を証明できますし、証拠写真に無ければ、自分で付けた傷なので「通常使用」の範囲外になるわけです。
引越しをするときに、問題の箇所(多めに請求される箇所)が最初から有った傷等なのか証明できたら楽ですよね。入居時に大家と証拠を写真などで共有できるならば、取り交わすに越したことはないでしょう。
残念ですが、証拠写真の共有は難しいのが現実です。
今の時代は、借り手が優位だと言われるようになしましたが、部屋を借りてあげていると言うよりも、部屋を貸してもらっているという認識は、まだまだ変わっていないと思います。要するに、ほとんどの決定権は大家が持っているのが現実だと思います。
例えば証拠写真の共有の場合、大家と借主で、1枚ずつ写真を撮りながら、意識を合わす必要があります。大変な手間と時間が掛かるこの行為、実施決定権は大家にあり、部屋を借りる人ではありません。
大家にしてみると、時間が掛かるということと、入居前にそこまでしようとする借主と契約してしまったら、今後も色々と注文が多そうで面倒かも。この様に思われて、貸すのを止めることだって有り得ます。借り手が見つからない不人気物件なら別ですが、他の人に貸そうと思うのが心情です。
ところで、新聞の記事では、「交渉が無理なら入居を取りやめるのも考え方だ。」こう締めくくっています。当然取りやめれば次の物件を探す必要があります。次の物件を紹介しても同じことを繰り返されると思われれば、不動産屋への印象も悪くなり、物件の紹介は慎重にならざるを得ません。
証拠写真の共有は容易ではありません。ミイラ取りがミイラに成らぬようにご注意を。
2007年3月26日